【レポート】収益不動産の時価と相続税路線価に基づく評価額(後編)

令和2年(行ヒ)第283号相続税更生処分等取消請求事件の令和4年4月19日最高裁第三小法廷判決を具体的に検証してみました。時価と相続税路線価に基づく評価の一般的な差額については、前編で確認ください。(https://www2.capratemap.com/information/show/59)

1相続の概要

・被相続人が90歳の時に、収益不動産を2棟購入し、94歳の時に相続が発生

・相続発生後9カ月後に収益不動産のうち1棟を売却

・収益不動産の購入価格:1,387,000千円

・借入額:1,055,000千円

・路線価方式による評価額:333,668千円

・鑑定評価額:1,273,000千円

・収益不動産を購入しない場合の被相続人の相続財産の課税評価額:665,000千円

・融資をした銀行の稟議書に「相続対策のため」との記載あり

2判決の内容

当該判決は、「評価通達は相続財産の価額の評価の一般的な方法を定めたものであり、課税庁がこれに従って画一的に評価を行っていることは公知の事実であるから、課税庁が、特定の者の相続財産の価額についてのみ評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることは、たとえ当該価額が客観的な交換価値としての時価を上回らないとしても、合理的な理由がない限り、上記の平等原則に違反するものとして違法というべきである。」と確認した上で、合理的な理由については、借入により不動産以外の相続財産の減額、租税負担の軽減の意図及び本件購入・借入れのような行為をせず、又はすることができない他の納税者との不均衡(租税負担の公平)を考慮して判断してます。

3まとめ

不動産の相続税評価は、これまでどおり路線価方式に基づく評価が原則とされましたが、相続税の租税負担の軽減の意図をもって、相続税路線価に基づく評価額を超えて多額の借入により収益不動産を購入した場合は、租税負担の公平に反するとして、時価評価(鑑定評価額)による相続税の課税の可能性があることに、今後は留意が必要であるものと思われます。

令和4年4月19日最高裁第三小法廷判決 https://crmap.sakura.ne.jp/report/202204/hanrei.pdf